紙で情報を見るのと,パソコン上で情報を見るのではCO2はどちらのCO2排出量が多いかを再度検証する.
紙を作る原料は木材パルプと古紙だが,日本は古紙の再利用率が高く,パルプの原料も製材の際に出る端材や,計画的に植林された木材を利用することもあり,必ずしも製紙業が森林破壊の主原因ではない.森林破壊の大きな要因は,「農地への転用」や「薪炭材の採取」と言われている[1].問題は紙の製造工程で出されるCO2 でコピー用紙の製造過程で発生するCO2は古紙パルプ70%を使用した場合,1tあたり約1,200kgと試算されている[2].A4のコピー用紙は500枚で2.2kg~2.4kg.2.3kgとすれば,1枚当たり4.6gであるから約5.5gのCO2発生に相当する.
一方,パソコンのCO2発生量は機種によって異なるが,現在使用している2008年製A4サイズのノートパソコンの場合,平均消費電力は16.9Wとある[3].電力を1kwh使用する際に発生するCO2は電力会社ごとに異なり,CO2排出係数として公表されている.東京電力の場合[4],2008年度実績で0.339kg/kWhであるから,1時間ノートパソコンを使用すると,5.7gのCO2が発生する.
先ほどの結果と比較するとA4の紙一枚を使用することはノートパソコン1時間の使用にほぼ等しい.インターネット上の情報を閲覧する場合,データセンターやネットワーク機器が消費する電力を発生するために大気中に放出されるCO2も考慮する必要があり,書籍・雑誌,新聞にも流通時に排出されるCO2を考えなければならないが,短時間しか読まない文書では画面上で見たほうがCO2発生量は少なそうである.
ちなみに文庫本はだいたい150gなので,ノートパソコン32時間.新聞の場合,朝日新聞のホームページによると[5],同社の一日あたりの新聞紙の消費量は1800t.公称800万部なので一人当たりの1日あたりの新聞紙消費量は225gとなる.これはノートパソコン47時間の使用に当たる.文庫本は,内容によってはかなり読むのに時間がかかるものもあるかもしれないが,新聞の朝夕刊を丸2日間,昼夜にわたって読み続ける人は居ないだろう.以上はノートパソコンとの比較だが,アマゾンのキンドルなどの電子ペーパーを用いた場合,情報の書き換え時以外電力を消費しないため[6],さらに消費電力は少なくなると考えられる.
出典:
[1]李賢映:サブサハラアフリカにおける地球温暖化対策とは何か?,SERC Discussion Paper,財団法人電力中央研究所 社会経済研究所(2007)
[2]紙の主要品種LCIデータについて,日本製紙連合会(2007)
http://www.jpa.gr.jp/file/release/20070925025534-1.pdf
[3]HP Compaq 2210b/CT Notebook PCスペック,日本ヒューレット・パッカード
http://h50146.www5.hp.com/products/portables/2210b_ct/specs/celeron_model.html
[4]平成20年報告用東京電力のCO2排出係数,東京電力
http://www.tepco.co.jp/eco/co2/pdf/co2-coef.pdf
[5]数字で見る朝日新聞,朝日新聞
http://www.asahi.com/shimbun/honsya/j/number.html
http://www.asahi.com/shimbun/honsya/environment/
[6]面谷信:紙への挑戦 電子ペーパー,森北出版(2003)